同社フロントエンジンモデルのフラグシップ
先日、アストン・マーティンが12年ぶりにフルモデルチェンジを果たした新型「ヴァンキッシュ」を発表しました。
フロントに5.2リッター、ツインターボV12エンジンを積んだフラグシップモデルで、同社によるとこのモデルをもって「フロントエンジン・スポーツカーのポートフォリオが完成した」とのこと。
今回どのように進化したのか、その内容を見ていきます。
存続を危ぶまれたV12エンジンだが、今回は存続したようだ
まず触れたいのが、パワートレーン。
「アストン・マーティンといえばやはりV12エンジン」という事で、今回の新型ヴァンキッシュにも引き続き、搭載されることに。
過去には「もうV12エンジンを搭載しない」と最終限定モデルを販売していましたが、方針転換したようで少量生産モデル(新型ヴァンキッシュの生産台数は1,000台/年)にのみ今後も搭載されることになったようです。
この5.2リッターツインターボ・V12エンジンは835馬力 / 1,000Nmを発生させ、0-100km/h加速は3.3秒、最高速度350km/hを誇り、これまでのアストンマーティンの量産車では「最強・最速」。
パワートレーンはこの内燃機関のみで、他にハイブリットなどの「電動化」モデルは用意しないようです。
というのも、アストン・マーティンは現在、「V12・ツインターボ」と「メルセデス・AMG由来のV8・ツインターボ」の2つのパワートレーンをラインナップしています。
そしてこの「メルセデス・AMG由来のV8・ツインターボ」を搭載する「DB12」と「ヴァンテージ」には今後、PHEVが搭載される事が検討されている模様。
しかし、V12エンジンはそれ単体でもかなり重量があり、それに加えてPHEVシステムを追加するとかなりの重量に。
よって、このスーパースポーツの役割を担う「ヴァンキッシュ」に電動化は「どうにも向いていない」ということでしょうね。(電動化の結果、重量が増えて中途半端な動力性能になるくらいなら、大排気量の純ガソリンエンジンというほうがキャラクターとしても訴求力が高いと思われる)
エクステリアはF1マシンやル・マン耐久マシンのエッセンスが見られる
ウルトララグジュアリーなパフォーマンスに、英国ならではのクールなスポーツカースタイルを融合し、歴史に名を残す最高のアストンマーティンV12フラッグシップをお届けします。
チーフクリエイティブオフィサー マレク・ライヒマン
上記のマレク・ライヒマンの言葉のように、新型ヴァンキッシュのデザインは「エレガンスと力強さ」が表現されています。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4850×1980×1290mm、ホイールベース=2885mmという堂々としたもので、乾燥重量は1774kgとのこと。
フロントエンドから見ていくと、伝統的な幅広なグリル(DBS770・アルティメットと比較して13%も大きな表面積)、デイタイムランニング一体型で新たなライトシグネチャーを装備したマトリクスLEDヘッドライト、空気を取り込んで直接ブレーキを冷却するバンパーエアインテークなどが確認できます。
そして、F1マシンのノーズを彷彿とさせるフロントフード上のプレスラインやエンジン冷却用のサーモスルーバーも備えます。
ボディサイドには新デザインの大型サイドストレーキ、ホイールは前後21インチサイズのアルミ鍛造で、フロントに235/30ZR21、リアに275/35ZR21サイズの専用チューニングが施された「ピレリPゼロ」タイヤを装着。
そしてフロントは410mm、リアは360mm径のセラミックカーボンブレーキが標準装備され、最大800℃までの温度でフェードを抑制。ブレーキスリップコントロールと統合トラクションコントロール、統合ビークルコントロールなどを連携させた「コーナーブレーキング2.0」によるダイナミクス性能とブレーキ性能の向上に成功しています。
かなり挑戦的なリアデザイン
また、これまでのアストン・マーティンらしい伝統的なフロントデザインに対して、大胆な変化を遂げたのがリアデザイン。
DBS 770アルティメットよりも10mm幅が広がったリアボディーに、垂直に切り落とされた「カムテール」が印象的で、勿論これは空力も考慮されています。
それに加えて、2023年にサーキット専用車で発表された「ヴァルカン」のリアデザインとの親和性を感じさせる7つのLED「ライトブレード」など、革新的で挑戦的です。
リアアンダーには大型のディフューザーとステンレススチール製の4本のテールパイプを備えるエキゾーストシステムが装着されています(※重量を−10.5 kgできる、チタン製エキゾーストシステムもオプションにて用意)。
インテリアはDB12のデザインをベースに、ヴァンキッシュ用にアレンジされている
インテリアはDB12やバンテージと同様、10,25インチのドライバー用ディスプレイとセンターコンソール中央には同サイズのタッチスクリーンが設置され、インフォテインメントやエアコン、車両の一般設定などの操作が可能。
V12エンジンの始動は、センターコンソールの中央に配置されたガラス製のスタート/ストップボタンで行い、周囲には、機械加工された金属製のドライブモード切り替え用ロータリーダイヤルが備わっています。
シートにはヒーターとベンチレーション機能が組み込まれ、その後方は荷物スペースに充てられています。(レザーバックが設置されるという、なんともお洒落なアストン・マーティンらしい仕様)
2つのアンプと15個のスピーカーを配置したBowers&Wilkinsのサラウンドサウンドシステムも標準装備し、同ブランドのフラグシップに相応した豪華な仕立てが施されていますね。
アストン・マーティンは目下、変革中である
今回の新型ヴァンキッシュの発表を見て、やはり思うのは同社の「変革の意識」。
これまでのアストン・マーティンは、「伝統的なラグジュアリー・スポーツカーメーカー」であり、勿論それが長所であり短所でもありました。
ローレン・ストロールが会長に就任後、経営戦略(特にF1などのモータースポーツを関連させたマーケティングやプロモーション)に大きく変化が見られ、それが今回の新型バンキッシュのデザインにも現れていますね。
また最近、現在レッドブルに所属している伝説的F1カーデザイナーの「エイドリアン・ニューウェイ」が2026年からアストンマーティンに移籍すると報道されています。
元々2025年4月初旬でレッドブルを去る契約であり、その後のキャリアを巡って多くのF1チームが争奪戦を繰り広げていました。(本命はフェラーリであるとも報じられていた)
今回、エイドリアン・ニューウェイの移籍先がアストン・マーティンになった理由の1つが、イギリス・シルバーストーンにある超ハイテクファクトリーであったとの事。2億ポンド(約390億円)もの資金を費やした新工場の規模と最先端の技術にニューウェイが驚愕し、移籍の後押しをしたと報道されています。
また、2000万ポンド(39億円)もの年俸を用意しているとも噂され、ローレン・ストロール、ひいてはアストン・マーティンのF1活動への本気度が伺えますね。
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