キャッチフレーズは、“For Real Drivers Only”
さて、アストン・マーチンが現地時間2月12日に英国・シルバーストーンサーキットにて新型ヴェンテージを発表しました。価格は日本円で2690万円で、日本でのデリバリーは今年第2四半期以降を予定しています。
先日「スーパーツアラー」と自ら称するDB12 / DB12ヴォランテを発表したところですが、それに対してヴァンテージの担うポジションは「スーパースポーツ」。
それを実現するには「息をのむようなパワー、カミソリのような鋭いハンドリング、細かく調整されたフロントエンジン」が必要だったとのこと。
エンジンの大幅アップデート
新型ヴァンテージは、メルセデスAMG由来の4リットルV型8気筒ツインターボエンジンを搭載し、最高速度325km/h、最高出力は665ps(先代比+30%)、最大トルクは800Nm(先代比+15%)を誇り、0-100km/h加速は3.5秒を記録。
これらの高出力は、アストンマーティンのエンジニアによる広範なチューニング、変更されたカムプロファイルの採用、圧縮比の最適化、大型ターボによって達成されています。
また冷却系の強化として、低温ラジエーターをインタークーラーの冷却回路に取り付けたほか、既存のメインラジエーターに補助クーラーを2機追加するなどで広範囲にわたるアップグレードを実施。さらに補助外部オイルクーラーの表面積を従来の2倍に拡大し、ラジエーターに達する冷気量を増加させ、熱エアフローも強化しています。
シャシーの大幅強化
駆動方式はFRで50対50の前後重量バランスを実現。
シャシーも強化されており、再設計・再配置されたフロントボディクロスメンバー、フロントエンジンクロスブレース、リアサスペンションタワーの強化(先代比+29%剛性UP)、フロントとリアのアンダートレイの修正、ダンパーのフロントとリアの取り付け剛性向上等が行われ、精度、ハンドリングバランス、ドライバーへのフィードバックの向上を目指したとのこと。
このほか、力配分の帯域幅が500%増加したインテリジェント アダプティブ ダンパー、電子パワーアシスト ステアリング システム (EPAS) などもアナウンスされています。
またタイヤはヴァンデージ専用開発のAMLコードが付いたミシュラン「パイロットスポーツ5s」で、フロントは275/35R21、リアは325/30R21 を装着。21インチ鍛造アロイホイールと組み合わされることで、ステアリングレスポンスとフロントエンドグリップがさらに向上。さらに、フロントブレーキローターを400mmに拡大しています。
エクステリア
新型ヴァンテージは全幅が30mm拡大し、グリル開口部も38%大きくなるなど力強いスタンスを強調。
筋肉質を高め、彫刻的なフロントフォルムは特にOne-77が意識されています。
ヘッドライトは新しいマトリックス LEDランプを備えた完全なる新設計を持ち、よりアストンマーティンらしくなったように思えます。(先代ヴァンテージのエクステリアはかなり不人気であった)
加えてサイドストレーキの復活や、フレームレスドアミラー、新しいドアハンドル、リアバンパー上のサイドベント、より大きな直径を持つクワッドエキゾーストテールパイプも大きな特徴ですね。
インテリア
インテリアはデザイン、快適性、装備に関しても最高級の素材で覆われ、最先端のコネクテッドテクノロジーを搭載。iOS および Androidデバイスをサポートし、これらを10.25インチサイズのマルチスクリーンシステムで管理しています。
その下にはギア選択、ドライブモード選択(先代は、スポーツ・スポーツプラス・トラックの3つだったが、そこに加えてインディビジュアルとウェットモードが追加された)、エアコンなどの主要な機能操作用のボタンが配置されています(あえて物理ボタンを残し、走行中にブラインド操作できるようにするため)。
新型ヴァンテージはDB12に続き、アストンマーティンの次世代インフォテインメントを搭載した2番目のモデルとなっています。
アストンは以前と比べ大きく生まれ変わりつつある
さて、今回発表された新型ヴァンテージの内容を見ていきましたが、僕が最近注目しているのがアストン・マーチンの「ブランド戦略の大きな変化」。
それはこのヴァンテージを英国シルバーストーンサーキットで、「ヴァンテージGT3」「AMR24(2024シーズンを戦うF1マシン)」と同時発表している事からも伺えるように、モータースポーツ(特にF1)を絡めた宣伝、ブランドイメージの構築を進めています。
まだアストンマーチン自体はF1参戦して数年にも関わらず(2021〜)、ここまで前面にモータースポーツを押し出し始めたのは、やはりランス・ストロール会長の手腕と思われます。(カナダの実業家で元々はアパレル業界出身)
アストン・マーチンはこれまで何度も経営難に陥り、今現在も中国自動車大手の吉利に買収される噂もありますが、SUVタイプの「DBX」の販売が好調で、モデル末期であったDB11や今回のヴァンテージをフルモデルチェンジし、どんどん製品ラインナップの新陳代謝を図っています。
これまでは「英国の伝統ある高級スポーツGTブランド」として経営していた訳ですが、資金難のため古いプラットフォームやエンジン、メルセデスの型落ちインフォテインメントを使用せざるを得なく、どうしても他社に対して商品力が劣っていました。(その上ブランド認知度も世間一般的には比較的低い)
今後はモータースポーツによるブランドの発信力と製品の独自性で、どれだけ強い経営基盤を築けるかが鍵となるでしょうね。
個人的には、近年の車ではDB11が最も美しい車だと思っています。(特にエクステリア。インテリはあまりにもメルセデスそのままなので、好きではない)
好きなブランドだけに、今後の動向に注目しています。
参照:Response
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