テスラ CO2クレジットで約2676億円の利益計上と報道

テスラ

テスラには自動車販売に関して、色々なビジネスを持っている

さて、テスラが2023年度の「CO2クレジット」の販売利益が約2676億円であったと報道されました。

この「CO2クレジット」とは主に米国、欧州、中国で「販売車両に対してCO2排出量」というものが決められており、この値を超えれば非常に高額な「罰金」を各自動車メーカーは支払わなければなりません。

このペナルティはかなり大きいもので、2020年度のVWグループではこの罰金が200億円に達した、とも報道されました。

この「罰金」から逃れるには当然ですが「販売車両からCO2排出量を減らす」、つまり「PHEV」や「EV」の販売比率を上げる事が必要ですが、開発から販売を考えると全ての自動車メーカーがすぐに実行できるわけではありません。

そこで、「CO2排出超過分」に相当する「CO2クレジット」を他社から購入することで、購入したクレジット額の分だけCO2排出量が低くなった事にできる救済処置が設けられています。

CO2クレジットはEV専業メーカーにとって「打出の小槌」状態

EVは(走行する事に対して)全くCO2が排出されないため当然罰金は無く、それどころか逆に他社に販売するクレジットが溜まっていきます。

つまりテスラなどは車を作れば作るほど、「売ることが可能な」クレジットが溜まってゆくことになり、さらに利益が増加するということになります。(しかもCO2クレジット単体には原価や在庫を抱えるといった概念もないため、文字通り丸儲けになる)

2020年に初めてテスラが黒字できたのは、この「CO2クレジット」分の利益が大きいと言われています。(その額なんと16億ドル、つまり約2174億円)

しかも興味深い事に、この「CO2クレジット」というEV専業メーカーへのボーナスはガソリン車→EV車への転換が進めば減っていくはずですが、2020年と比べても増加しています。

各社電動化へのシフトが思うように進んでいないのかもしれませんね。

テスラは新たな趣向の自動車メーカー

僕は以前からテスラの強みは車両本体ではなく、バッテリーシステムや遠隔でのソフトウェアアップデート、テスラの充電規格であるスーパーチャージャーが優れていると思っています。

それはつまりハードウェアではなくソフトウェアが優れていて、ある意味「製造業」ではなく「ハイテク企業」が自動車製造分野に進出したような印象です。

例えばVWのID.3のバッテリーは「数年で蓄電量が半分」、トヨタのバッテリーでは「10年経つと60〜65%」になると言われているなか、テスラのバッテリーは「32万キロ走行しても88%残存する」といわれています。

勿論この数字をそのまま信用して良いとは思いませんが、航続距離やスーパーカー並みの加速力を早くから安定して実現したテスラは、バッテリーマネージメント力に優れていると考えます。

また、遠隔にてソフトウェアのアップデートを行い、自動運転支援をはじめとした車両の機能を「後付け」できるシステムや、販売ディーラーを減らして維持コストを下げ、その分車両本体価格を下げる試みを行うなど、自動車業界に新たな風を吹き込んでいますね。

自社開発の充電ネットワークが強い

そして、テスラの強みは何と言っても自社製充電ネットワークである「スーパーチャージャー」です。

テスラがビジネスをスタートした時は、他に純EV車を販売していたのは「日産リーフ」や「シボレー・ボルト」ぐらいで、自前の充電ネットワークを設置する必要がありました。

この「スーパーチャージャー」を1ヶ所設置するのに2~3,000万円かかると言われていますが、その際テスラが取った経営戦略が「高級路線」。

そもそもEVはまだまだバッテリー代が高価で、車両本体価格も必然的に高価なものとなってしまいます。

「日産リーフ」や「シボレー・ボルト」は、ガソリン車からの買い替えを狙い、努力して低価での販売を行っていました。(それでもガソリン車と比較してかなり高価だが)

それに対しテスラは高級路線を押し出し、(富裕層が出入りする)「リゾート」や「高級ホテル」に絞って設置した事で充電器の数を少しずつ増やし、また同時にブランドイメージを上げる事に成功しました。(富裕層にはアーリーアダプターが多く、よりEVの魅力を押し出しやすい)

なお、その後テスラの車両販売数が増加するとともに、「スーパーチャージャー」の設置数も増加した結果、現在は全世界で50,000基あるとされています。(日本国内は100基)

またテスラはホワイトハウスとの契約によって2024年末までに75,000基までスーパーチャージャーを増加させる計画があり、今後ますますテスラの充電ネットワークは広がる予定です。

他社も「スーパーチャージャー」を利用せざるを得ない

そして、ここまで「スーパーチャージャー」が充電インフラとして存在感が強くなった今、「VWグループ」を含めほぼ全てのメーカーが「スーパーチャージャー」の充電規格(NACS)を採用する事に。

これで、採用していない主要な会社は「ステランティスグループ(プジョー、シトロエン、マセラティ、アルファロメオ、フィアットなどの親会社)」のみ。

ただしストランティスグループも近い将来、(NACS)を採用するであろうと思われます。

一年前はテスラしか採用していない自社充電システムが、あっという間にほぼ全てのメーカーに採用された考えると、テスラの発展ぶりに驚異を感じますね。

テスラは今後もこの充電ネットワークを他社製EVに開放していきますが、勿論それらを他社のEVユーザーが使用する際には手数料を取られることになり、テスラは大きな収益を確保できます。(無論、充電スポットの維持費もここで賄っていかなければならない)

では、EV市場はテスラの独壇場なのか?

ここまで紹介したテスラの独自かつ強い経営戦略により、大きな地位を確立しつつある同社ですが、このままEV市場を席巻するのかというと、今の自動車業界はそう単純な状態ではありません。

その理由の一つに、「BYD」という中国メーカーの勢いが強く、中国国内だけで見ればテスラの販売台数を抜くのも時間の問題だと言われているからです。(中国はEVの主要市場であり、このシェアをどれだけ占めるかはとても重要である)

BYDは中国メーカーでは珍しい「独立会社」です。(他の中国大手メーカーは、海外メーカーとの合弁会社である事がほとんど)

しかも自社でバッテリー製造を行い、その分のコスト削減やバッテリー不足といった影響を受けづらい事がここまでの成長の要因です。

そしてこのBYDを含む、中国車の輸出台数が2023年に日本を抜いて世界最大になり、中国はとうとう「自動車輸出国No1」になりました。

これは中国国内でのみ中国メーカーが発展しているわけでは無く、世界でのシェアも地域によってはだんだん占めてきている事を示しています。

今後、自動車業界はこのままEVシフトへ突き進むのか、そして中国経済やBYDを含めた中国メーカーの躍進はどこまで続くのか、日本や欧米、アメリカの古参メーカーは今後どうなっていくのか、注目ですね

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