営業利益率は当初予想の6.5~7%→約5.6%へと引き下げ
さて、自動車メーカーのVWが2024年の通期業績見通しを下方修正すると発表。
営業高の当初予想を前年度比+5%を目標にしていましたが、一転して同0.3%減の約3200億ユーロ(約50兆8600億円)に修正され、販売台数は最大で前年比3%増の950万台程度を見込んでいたものの、900万台程度に引き下げました。
これにより、2024年度の営業利益は約180億ユーロ(約2兆8600億円)となる見込みで、営業利益率は当初予想の6.5~7%から約5.6%へと大きく下方修正されています。
「各ブランドの開発が当初の期待に及ばなかった」
同社は上記のようにコメントしていますが、簡潔に言えば「欧州のEV需要の減少と中国市場でのシェア低下」が今回の経営悪化の原因。
EVの開発で多大な開発コストをかけるも回収できず、現在はVWグループ全体でコストカットに動いてるもよう。
よって創業以来初めて、ドイツ国内工場の閉鎖を検討しているという報道まで出ていますが、その結果従業員による予告ストライキや労組との交渉決裂(労組側による7%の値上げを拒否)など多くの問題を抱え、まさに正念場です。
他のドイツブランドやストランティスグループも苦戦中
無論、2024年度はVWグループのみ苦戦しているわけではなく、
・メルセデス・ベンツ:2024年度の売上利益率予想を10-11%から7.5-8.5%に引き下げ
・BMW:2024年通年の売上利益率予想を8-10%から6-7%に引き下げ
・ストランティスグループ(クライスラー、ダッジ、ジープ、フィアット、アルファロメオ、マセラティ、プジョー、シトロエンなど):2024年上半期の利益が前年比−48%と大幅減少
と軒並み減少または利益予想を下方修正しています。(特にストランティスの経営悪化は、大惨事と揶揄されているほど)
数ヶ月前はトヨタやホンダ、フォードなど普及価格帯の車を販売しているブランドの苦戦が報道されていましたが、とうとうプレミアムブランドにも影響を及ぼしているようですね。
理由としては、中国国内の景気後退による高級車の買い控えと、中国車の性能が徐々に向上したことで相対的にコストパフォーマンスに優れた車が登場し、シェアを伸ばしている事が挙げられます。
次なる課題は高価格帯であり、IT技術で勝負をかけてきている
着々と国内シェアを拡大している中国メーカーですが、より「利益率の高い」高価格帯の車にも力を入れているようです。
大手中国メーカーのBYD(日本国内にも販路を拡大し、テレビCMも流れている)が、プレミアムオフロードブランドとして展開している「ファンチェンバオ / 方程豹」。
この新ブランドが先日、「BAO 8」というオフロードSUVを発表しました。
この車の1番のトピックは先進運転支援システムで、なんと通信機器大手の華為(ファーウェイ)と提携。先進的な「スマート運転ソリューション」を搭載した最初のBYD車だとアナウンスされています。
「BAO 8」とは、どんな車なのか
この「BAO 8」という車を詳しく見ていくと、全長5195mm/全幅1994mm/全高1875mm、ホイールベースは2920mm、車両重量は 3,905 kg のフルサイズSUVです。
動力形式はPHEVで、エンジンは車輪に接続されていませんが、2リッター・ターボエンジンが200 kW の電力を生み出し、モーターまたはバッテリーに供給。
前部に200kWの小型モーター、後部に300kWの大型モーターを搭載し、パワートレイン全体の出力は700kW(939馬力)です。0-100km/h加速は4.8秒、最高速は180km/hとフルサイズSUVとしては十分な性能を備えます。
そして上記の「スマート運転ソリューション」ですが、ファーウェイによって開発されたQiankun ADS 3.0をベースにしていて、「進化したマップレスインテリジェント運転、衝突回避、全シナリオ駐車」において大きな進化を見せているとのこと。
「マップレスインテリジェント運転」はその名の通り、高精度の地図に依存せず、搭載されたカメラなどを駆使して車両自身の高性能な「認知機能」を元に、都市や田舎など関係なくスマートな運転支援が可能とのこと。
「全シナリオ駐車」では、ドライバーがクルマから降りて歩き去る間にクルマが自動的に駐車することが可能になっている、と説明されています(ファーウェイが技術を提供するほかのEVブランドの車にも、この機能が搭載されている)。
エクステリアはタフなオフロードを走破できるよう、「ランプブレークオーバーアングル」や「アプローチアングル」、「デパーチャーアングル」が確保されスペアタイヤも搭載するまさに王道スタイル。
インテリアも水平基調のダッシュボードや大きめなステアリングといったオフロード要素を意識したデザインを採用する一方で、運転席側に巨大なインフォテイメントスクリーンや助手席側にまでも大きなスクリーンを配置しています。
価格は50万元(約1050万円)と高価格帯ではありますが、装備や車格を考慮すればなかなか商品力があるように思います。
実際、韓国車や中国車に比べて、車のソフトウェアの部分で日本や欧米車は遅れを取っているという調査結果もあるほどで、今は唯一「テスラ」が一矢報いているような状態。
以前、米大手IT企業のアップルが「アップルカー」の研究・開発を断念したと報道があったように、車のハードウェアとソフトウェアの両輪を手掛けるのはかなり難しいようですね。
そこで「BYD」と「ファーウェイ」の提携というのは、とても自然かつ強力な経営戦略であり、中国が国を上げて自動車産業に力を入れているのが伺えます。
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