10年以上の歳月をかけたが、とうとう実らなかった
さて、アップルが自動車業界に参入すると宣言して久しいですが、とうとう撤退することになったとの報道がありました。
撤退の要因は主に、「レベル5の完全自動運転が現在のアップルの技術では不可能」、「車両のベースであるプラットフォームの製造パートナーが決まらなかった事」と思われます。
自動運転技術に関しては、「レベル3」に格下げして開発するという噂もありましたが、アップルはその道を選ばなかったようですね。
ちなみに「レベル3」とは予め設定された区域(例えば高速道路など)の限られた条件下において、ドライバーの「ハンズオフ」を超えて「アイズオフ」が可能になるレベル。
つまり運転中に前方を確認せずに、運転以外のこと(セカンドタスク)を行う事ができるようになります。(悪天候や、道路工事などの障害物回避などはドライバーが行う必要がある)
現在「レベル3」の技術はメルセデス・ベンツのEQSやSクラスに搭載されています。
しかしAppleは「レベル5」の自動運転技術(つまり無制限の完全な自動運転)により、ハンドルやペダルも省いた車を開発目標にしていた為、自動運転レベルの格下げは考えていなかったようですね。
自動運転のレベル分けについて(出典:国土交通省「自動運転のレベル分けについて」)
Appleが自社で独自のプラットフォームを作成するのも現実的ではない
そして、二つ目の理由である「製造パートナーの確保が難航した」ことも販売には大きなハードルに。
以前はヒュンダイがその提携先として決定的とまで言われていましたが(それにより一時、ヒュンダイの株価が大きく上昇したほど)、Appleがヒュンダイに対して「あまりに支配的な奴隷契約」を要求した結果、交渉が決裂したと報道されています。
その後、日産やホンダ、BMW、VWやトヨタなど色々な噂が出ては消えてしまい(たとえ提携してもAppleの下請けを担うだけなので、既存メーカーにはあまりメリットが無かったのだろう)、自動車エンジニアを多数引き抜いて自社開発へ方針を切り替えたものの、採算が合わず断念したものと思われます。
ただし、株主たちはこの決断を歓迎しているようだ
報道によると、Appleの最高執行責任者ジェフ・ウィリアムズ氏とプロジェクト担当副社長のケビン・リンチ氏により、「タイタンプロジェクト」に参加していた2,000人以上の従業員に対してプロジェクトの中止と「生成AI」チームなどの他のプロジェクトへの転属が告げられたとのこと。
面白いことに、このプロジェクト中止の報道により、アップルの株価が上昇(8.1%)。
多くの株主が、「タイタンプロジェクトが失敗する」と考え、逆に今回の方針転換を歓迎しているという事ですね。
生成AIの市場成長は今後10年で、年平均30%とも言われている
上記で挙げた「生成AI」はTVでも度々ニュースに取り上げられる程になり、世界で今後かなり成長が見込まれる分野と言われています。
このブームの立役者は2021年11月に導入された「Open AI」のChat GPT(Microsoftが資金提供)で、そこに「Amazon」と「アルファベット(Google)」が追従している形です。
つまりAppleは出遅れている形のため、製品化のハードルが高く利益も不透明な自動車事業よりもさっさと生成AI分野に舵を取る必要があったという事ですね。
ハイテク分野の発展スピードは早く、各社競争が熾烈ですね。
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