ランボルギーニ・テメラリオはどんな車に仕上がっているのか?
さて先日、ランボルギーニが新型車である「テメラリオ」を発表しました。このモデルは2013年に発表された、V10エンジンモデルである「ウラカン」の後継モデルにあたります。
「テメラリオ」という車名の由来は、その他のランボルギーニの車種の命名規則と同様、「実際に存在した闘牛」の名に由来するもので、「獰猛、勇敢である」という意味を持つとのこと。
「ウラカン」はランボルギーニ社史上、最も販売台数が多かった大ヒットスーパーカーモデルであり、当然テメラリオもその役割が求められ、同社の力の入れようが見受けられますね。
エクステリアは六角形とY字をアイコンに、ウラカンからの発展が多く見られる
「テメラリオは正真正銘のフォリクラッセ(イタリア語で超一流、極上を意味する)であり、技術的にもスタイル的にも並はずれた革新的なクルマです」
アウトモビリ・ランボルギーニ会長兼 CEO ステファン・ヴィンケルマン
テメラリオの外観を見てみると、同社の旗艦モデルである「レヴエルト」と比較してかなり「マイルド」な造形ですね。
特にフロントフード形状やワイドなフロントウインドウ、細いAピラー、上下に薄いサイドウインドウや三角窓といった特徴はウラカンからの系統を受け継いでおり、サイドの大きなエアインテークはウラカンの前身モデルである「ガヤルド」からもインスピレーションを感じさせます。
対照的にリアサイドでやはり特徴的なのは、「フロントのデイライトランプと呼応した」ヘキサゴン形状を持つテールランプ。また、あちこちに整流を考慮したエアチャンネルが見られ、複雑な形状が見られます。これにより、テメラリオのダウンフォースは「ウラカンEVO」比でなんと「103%」も向上しているとのこと。
また、ランボルギーニのチーフデザイナー、ミッチャ・ボルカート氏が好むリアタイヤが「ガバっと見える」デザインが今回も採用されています。
なお、テメラリオのボディサイズは全長4,706mm、全幅1,996mm、全高1,201mmで、ウラカンEVOの「全長4,520mm、全幅1,933mm、全高1,165mm」からはすべての数字が大きくなっています(ホイールベースは2,620mm→2,658mmに拡大)。
モデルチェンジでサイズが大きくなる事は、近年のトレンドなので特に驚きませんが、少し気になったのは全高が1,200mmを超えてきたこと。
ライバルであるフェラーリやマクラーレンの全高が「1185mm~1196mm」のモデルが多い中、ウラカン(1,165mm)やレヴエルト(1,160mm)は全高が低く設定されていたのが同社の特徴であったため、少し意外です。
全体的に見ればドア上部やリアフェンダー上部はやや丸みを帯びていて、これがテメラリオを上品で優雅に、そしてややマイルドに見せているのかもしれません。(もちろん実車を見れば、その迫力に圧倒されるだろうが)
インテリアはこれまで同様、コクピットスタイル。コネクティッドサービスも強化されている
インテリアもこれまでのモデル同様、ヘキサゴン要素がより多く見られます。その上、実用性も大幅に向上してヘッドルームは約3センチ拡大、レッグルームが約4.5センチ伸びることで「より高身長の人にも対応可能」。
ダッシュボードの中央には8.4インチの縦型タッチスクリーンが備わり、ドライバー用としては12.3インチのデジタルメーター、そして助手席には9.1インチのタッチスクリーンディスプレイが用意されています。この助手席にもディスプレイを設置する手法は近年、フェラーリも採用していて、ドライバーは勿論、乗員全員でドライブを楽しむというコンセプトがスーパースポーツクラスで今後は主流になると思われますね。(※助手席側の追加ディスプレイは58万円のオプション)
Temerarioは、Lamborghiniの「Feel like a pilot」(パイロットのような気分)という哲学を新たな手法で解釈しています。コックピットは、ドライバーと同乗者の双方にスピード感や新しい車内エクスペリエンスを提供するだけでなく、これまでにない乗り心地も実現されています。Huracánに比べ長くなったホイールベース、広いスペースが確保された室内高、新しい「コンフォートシート」のおかげで、Lamborghiniスーパースポーツカーを運転することが、かつてないほど快適なものになりました。また、新しいヒューマン マシン インターフェースと、テレメトリー2.0、メモリー レコーダー、ダッシュカム、拡張現実ナビゲーションなどの新しいコネクテッド サービスにより、直観的な操作が可能になっています。
Lamborghini
パワートレーンは新開発のV8エンジンターボ+プラグインハイブリット
テメラリオの一番のトピックといえばやはりそのパワートレーンで、「ガヤルド」「ウラカン」で採用されてきた伝統のV10エンジンから2気筒減って「V8エンジン+ツインターボ」になりました。
そして「レヴエルト」と同様にプラグインハイブリッドシステムと組み合わされ、システム最高出力は920馬力(9,000~9,750rpm)、最大トルク730Nm(4,000~7,000rpm)、最高速度343 km/h、0-100Km/hは加速2.7 秒、ブリミットはレヴエルトよりも500rpm 高い10,000rpmへ。
まずこのV8エンジンはコードネーム「L411」と呼ばれ、ランボルギーニが長年採用してきたV10やV12とは大きく異なり、同社がスポーツカーにターボつきV8 を搭載したのはこれが初めて。
このエンジンだけで800馬力を発生させる(つまり、1リッターあたり200馬力発生できる)ため、ランボルギーニがこれまでに製造した中で最もパワー密度の高いエンジンとなっています。
ここまで高効率なエンジンになっている理由の一つが、「ホットVレイアウト」を採用したこと。
つまりV8エンジンのVバンクの間にエキゾーストマニホールド、そして2つのターボチャージャーが収まっており、これによってエンジン全体をコンパクトに収められます。これによりプラグインハイブリット化による部品増加にも対応しています。
この「ホットVレイアウト」は、フェラーリが80年代にF1で採用したように昔からあるレイアウトですが、市販車両で採用されたのは2008年のBMWのN63エンジンが初。
採用直後は熱管理が難しいという懸念点がありましたが、技術開発が進むとともにアウディやポルシェ、メルセデス・ベンツなどが採用してきた歴史があります。
また、新開発のV8エンジンはさらに「フラットプレーン・クランク」を採用しています。
「フラットプレーン・クランク」はシャフトのピンが互いに180度離れていることで回転時のバランスが取れており、エンジンの回転速度を速くすることが可能です。(これに対し、「クロスプレーン・クランク」の場合は「バランスシャフト」でバランスを取る必要がある)
また、「フラットプレーン・クランク」構造は一般的に振動が大きくなるので部品強度の確保が課題となりますが、テメラリオのエンジンはチタン製コンロッドとモータースポーツグレードのA357+Cuで作られたエンジン鋳造材料を使用することでこの問題をクリアしています。
ターボラグ解消と、よりパワーを得るためのPHEVシステム
テメラリオには上記のV8エンジンとツインターボに加え、3つのエレクトリックモーター、そして3.8kWhサイズのバッテリーを組み合わせたプラグイン・ハイブリッドシステムを用いています。
このハイブリッドシステムの役割は燃費向上やエレクトリックモードでの航続距離を稼ぐためではなく、あくまで低速時のガソリンエンジンとターボチャージャーの動作を補完するためのもの。
容量が3.8kWhとかなり小さく軽量なため、エンジン、回生ブレーキ、または7kWの家庭用コンセントに接続すれば30分で充電が完了するとのことです。
もはや、ランボルギーニのスーパーカー入門モデルではなくなった価格とスペック
さて、今回のテメラリオの発表内容を見て僕が率直に思ったのが、「このモデルはランボルギーニの中でどのクラスに属する車なのか?」
日本での価格が4,207万6,645円と発表され、もちろんこれは「素」の状態なため、ここに1つ数百万するオプションを追加していくとあっという間にレヴエルトの価格に近づいていくことに…
そして価格以外にも「ミドシップレイアウト、リアに1モーター、フロントに2モーターを配置する4WD」という同じ構成で、レヴエルトは「1,015馬力、0-100km/h加速が2.5秒、最高速は350km/h」を発揮し、テメラリオは「920馬力、0-100km/h加速が2.7秒、最高速は342km/h」とかなり近いパフォーマンスを発揮。
これについては、
「1台(レヴエルト)はランボルギーニの象徴的なクルマです。もう1台(テメラリオ)は運転が楽しいだけでなく、より多用途で使いやすいクルマです。つまり、異なるニーズに応えており、多くのお客様が両方を購入することは明らかです。」
ランボルギーニ最高マーケティング・セールス責任者 フェデリコ・フォスキーニ
とランボルギーニ社は回答しています。
つまり、レヴエルトの方が若干パフォーマンスが高く、旗艦モデルとしての優位性をまだ保っているものの、求められている役割は「象徴」という、数値化できない存在。
これは先日フェラーリが「12チリンドリ」というV12フラッグシップモデルを発表しましたが、パフォーマンス面でのトップをミドシップモデルに譲るという構図によく似ていて、ポルシェの「911とケイマン」の関係性にも共通しますね。(ポルシェはまだ明確なヒエラルキーを保つために、意図的にケイマンのパフォーマンスを下方調整している)
今までガヤルド/ウラカンは、「アウディR8」とドライブトレーン・シャシーを共有していましたが、今回のテメラリオは、ランボルギーが完全にゼロから設計したことも大きなトピック。そのため特にアウディからの制約の無い自由な環境下で開発した結果、もう「ベイビーランボ」とは呼べないパフォーマンスと価格、ブランド内での立ち位置になったのかもしれませんね。
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